プリンセスメゾン/池辺葵
主人公の沼ちゃんこと沼越幸は26歳年収250万円。
だが彼女には、いつか理想のマンションを購入するという野望がある。
野望というか無謀というか、世間一般に見たら、「底辺がなに夢見てるんですか」と片付けられることかもしれない。
しかし沼ちゃんはそうは思わない。理想のマンションを求め、カップル・夫婦で一杯のモデルルームに一人で通い続ける。
インターネット、特にSNSの普及によって、世界が均質化されているように思う。同じような問題意識を持ち同じような認識同じような価値観を持った人間が多くなっている気もする。これを持っていれば幸せ、逆になければ不幸みたいな基準も昔より厳しくなっている気がする。意識していなくても、私達は知らず知らずのうちにスペック主義みたいなものに憑りつかれてしまいがちだ。
例えばこのプリンセスメゾンの主人公・沼ちゃんは、年収250万、居酒屋チェーン勤務、26歳恋人ナシと、とても褒められたスペックではない。むしろ"負け組"や"底辺"の部類かもしれない。
しかし沼ちゃんは自分の境遇に負い目を感じていない。ただただ理想のマンションを購入する日を夢見てせっせと働く。
預金通帳を見てほほえむ沼ちゃんが印象的でした。
